福岡地方裁判所飯塚支部 昭和61年(ヨ)11号 決定
債権者
辻田照章
辻田義昭
辻田善光
債務者
野元忠美
主文
一 債権者らの申請をいずれも却下する。
二 申請費用は債権者らの負担とする。
理由
一本件申請の趣旨及び理由
別紙記載のとおり。
二当裁判所の判断
(一) 職権をもつて調査するに、当庁昭和六〇年(ヨ)第五二号金員仮払仮処分申請事件(以下「前件」という。)の一件記録によると、前件も、本件の債権者らが本件の債務者を相手方として、本件で債権者らが主張している交通事故による損害賠償請求権を被保全権利として、金員の仮払を求めたものであり、右事件は、当裁判所において、昭和六〇年八月二三日保全の必要性を欠き、あるいはその疎明を欠くとして却下され、これに対する抗告審(福岡高等裁判所昭和六〇年(ラ)第六五号)においても、同年一二月五日保全の必要性についての疎明不十分として抗告が棄却され、更に特別抗告審(最高裁判所昭和六一年(ク)第五号)において昭和六一年二月六日抗告が却下されて確定したものであることが明らかである。
そして、本件における債権者らの保全の必要性についての主張事実も、前件時に主張し、あるいは前件裁判の拘束力の基準時である昭和六〇年一二月五日以前に生じた事実であることは、右主張自体及び前件一件記録に徴して明らかである。
(二) そうすると、本件は、同じ仮処分申請の蒸し返しにすぎず、前件裁判の拘束力により、前件と異なる判断をすることはできないから、結局債権者らの本件申請は失当として却下を免れない。
(三) よつて、本件仮処分申請をいずれも却下し、申請費用は債権者らに負担させることにし、主文のとおり決定する。
(裁判官喜久本朝正)
(別紙)
申請の趣旨
一 債務者は、
債権者辻田照章に対し金一〇〇万円
債権者辻田義昭に対し金三〇〇万円
債権者辻田善光に対し金三〇〇万円
を支払え。
二 申請費用は債務者の負担とする。
との裁判を求める。
申請の理由
一 被保全権利
債権者らは債務者が惹起した交通事故の被害者であり、御庁昭和五二年(ワ)第七五号損害賠償請求事件で係争中の損害を被つている。
二 保全の必要性
(イ) 債権者らは昭和五二年四月二二日事故発生以来今日に至る迄八年以上の長期間にわたつて債務者から何等の賠償を得ていない。その為債権者らは生活費及び医療費を生活保護法による保護に求める事を余儀なくされ今日に至つた。
(ロ) しかしながら債権者らは、債務者や債務者の本件本案事件の代理者たる興亜火災や西野宇太彦らの依頼によるものか、昭和五七年以来福祉事務所職員より本件本案事件を降りる様圧力を受けてきたが、それをはねつけてきたので昭和六〇年八月限りで表向き書類の不備等を理由に生活保護を停止され現在に至り非常に生活に困窮している。
(ハ) 本件請求金額は債権者らの当面の生活費及び医療費として大至急入用な金員である。
ましてや昭和五二年(ワ)第七五号本件本案事件でも述べている様に債権者辻田義昭、同辻田善光は本件交通事故のため働けない体であり現状維持の為の医療費や生活費として是非とも入用な金員である。
(ニ) 債務者は債権者らに対し任意の支払拒否による兵糧攻めによる損害賠償の免脱をはかろうとしており悪質である。
現在生活保護を停止され収入がなく本件本案事件以外に訴を提起されており訴訟費用にも事欠き、若し本件申請が認められなければ生存権や正当な権利の主張も制限され、将来回復出来ない損害を被るので本件申請に及んだ。